●陽子線の治療について
●陽子線治療の特徴
ほかのがん治療と比較して…
●がん治療の中の放射線治療
がん治療は、主に手術、化学療法、放射線治療に分けることができます。 これらの治療法から、がんの部位、大きさ、性質、全身状態などをみて、どの治療を選択、もしくは組み合わせて治療するか決定することになります。 中でも、放射線治療は体にメスを入れることなく、治療台の上で横になっているだけでがんを直接治療することができる治療法です。 ただし、がんに放射線を照射するには、どうしても、がんの周りの正常な組織にも放射線が照射されることになるため、がん以外の組織が傷つき、そのために副作用が出ることもありますが、手術や化学療法と比較すると、副作用は少ないといえます。
●放射線治療の中の陽子線治療
放射線治療は治療に使用する放射線の種類で、光子線、電子線、粒子線に分類することができます。
従来、放射線治療にはX線が広く用いられています。 陽子線は粒子線の一種で、陽子線治療はこの陽子線を使用して行われる治療です。
●X線治療と陽子線治療の違い
従来広く行われている放射線治療は、主にX線を使用して行われています。 X線は人体に照射されると、体の表面近くに大きなダメージを与え、深くなるにつれ、ダメージが減っていくという特性があります。 そのため、深いところにある病巣を治療する場合、放射線の通り道にある正常な組織も傷つけてしまうことになります。 それと比較し、陽子線治療は強さを調整することで、ダメージを与えたいところに集中して与えることができるという特性(ブラッグピーク)があります。 この特性を利用することにより、正常組織へのダメージを最小限に抑え、がんに集中的にダメージを与えることができます。 つまり、従来のX線治療よりも副作用を軽減できるといえます。
これは放射線治療を行うにあたり、とても理想的な特性であるといえます。
●陽子線治療の照射技術
陽子線治療の照射技術は散乱体方式とスキャニング方式に分類することができます。
散乱体方式
従来より行われてきた照射法であり、陽子線発生装置から発生された細い陽子線を散乱体を通すことで広げ、その後、患者様ごとに作成したボーラスやコリメータという器具を使用し腫瘍の形に形成し照射するという手法です。
スキャニング方式
散乱体方式より新しい照射法で、スキャニングマグネットを使用し、陽子線発生装置から発生された細い陽子線(ペンシルビーム)を操作することで、腫瘍の形状に合わせて三次元的に照射する手法です。
スキャニング方式は散乱体方式と比較し、複雑な形状の腫瘍の治療が可能で、周囲の正常組織への影響を押さえることで、副作用を低減することが期待できます。
また、照射する前に通す機器が少ないため、そこから発生する余分な放射線(主に中性子線)を大幅に低減することが可能です。
●IMPT
(Intensity Modulated Proton Therapy:強度変調陽子線治療)
IMPTはスキャニング方式の応用技術で、ペンシルビーム1本ごとの強さ(強度)をコントロールすることで、腫瘍周囲の正常組織への影響をより押さえることのできる技術です。
●当院の陽子線治療機
当院に導入された陽子線治療機はベルギーに本社があるIon Beam Applications (IBA)社製のProteus®ONEという装置です。
IBA社
IBA社製の治療機は、現在世界で稼働中の粒子線治療施設のうち、半数以上の施設で稼働中であり、今までに同社治療機で治療してきた患者数は45000人以上にも上る、粒子線治療分野では世界のリーダー的な会社です。
Proteus®ONE
Proteus®ONEはスキャニング方式での照射法が可能で、IMPTにも対応しています。
上記(陽子線治療の照射技術)に記したように、複雑な腫瘍に対する治療が可能であり、正常組織への影響を抑えることで、より副作用を抑えることが期待されます。
●ベルギー製 IBA社の陽子線治療機を採用